沖田臥竜という作家さんが気になっています。元山口組二次団体の幹部という異色の経歴で、時々、ビジネスジャーナルに載るやくざ関係の記事を楽しみにしています。蛇の道は蛇ではないですが、その情報量と正確性に驚きつつ、やくざ関係ジャーナリストのニューカマーとして期待しております。ただ、沖田臥竜さんの作品自体には触れた事がなく、今回「生野が生んだスーパースター 文政 現在、男道にて修行中」がアマゾンキンドルの定額で読めるKindle Unlimitedに入っていたので、読んでみました。
文政という型破りで自分の法律で生きているスーパースターを、その兄弟である沖田さんから見た小説なのですが、戦後の闇市の頃ならいざ知らず、ここ10年くらいの中でこんな人本当に存在できるのと思えるぐらい無茶苦茶です。小説の舞台と同じ時期に大阪の北摂地域に住んでいた僕としたら、万が一でもこんな人と関わらんで良かったと思いました。でも、文政の自分勝手な生き方が魅力的に映るのは、いわゆる組織とは関係なく自立して存在しているからです。文政は在日コリアンですが、そんな国籍や国境、全てのしがらみから解放された文政の存在が爽快な気分させてくれます。
小説の最後の方で、文政とあまり関係ないエピソードが出てくると、少しテンションが下がります。おそらく単行本化するにあたって、書き足したのではないでしょうか。一番最後に、沖田さんの奥様(ひかさん)との話があり、2016年発行当時で文政の収監が後2年とあるので、2020年現在、文政はこの巷を跋扈しているのでしょう。恐いけど虎を見るように遠目から見てみたいです。
これを機に、沖田さんの他の作品も読んでみたいと思います。今後が楽しみな作家さんです。