大山詣り

未分類

落語を好きでよく聞いています。中でも古典落語を聞いて思うのは、前回も述べた寛容性と多様性、それと現代にも通じる若者文化を感じたりします。そんな噺を一つ紹介します。

落語の大ネタに「大山詣り」があります。長屋の若者たちが神信心で大山にお参りするとかこつけて、男だけの楽しい旅行に行きます。ただ、熊さんは酒癖が悪く毎年喧嘩沙汰を起こします。本当は留守番をして欲しかったのですが、どうしても行くというので、今回騒ぎを起こしたら丸坊主にするという約束で何とか連れて行ってもらいました。しかしながら、大山詣りも終えた帰りの藤沢宿で、また喧嘩をしてしまいます。怒った仲間が泥酔した熊さんの頭を刈ってしまい、寝ている熊さんを残して帰ります。丸坊主にされたと気付いた熊さんは、早籠を飛ばして仲間よりも先に長屋に戻り、主人の帰りを待つ奥さん連中を集めて、俺以外は金沢八景で溺れ死んだと伝えます。奥さん連中の中には、普段の熊さんの言動から嘘を疑う人もいますが、熊さんの頭を見て信用してしまいます。熊さんは、旦那さんの霊を弔うには髪を下して仏門に入る事を提案して、奥さんたちは頭を丸めてしまいます。そこへ一行が戻ってきて、「熊の奴、自分が坊主にされたので意趣返しをしあがったな」と一行が熊さんに殴り掛ろうとすると先達がこれを止め「これは目出度い」と言う。「こんな悪戯をされて何が目出度いか!」と一行が息巻くと「お山は晴天、家へ帰ってみれば、みんなお毛が(怪我)なくておめでたい」という下げになります。

何か江戸時代の人は大人で、今の若者は幼稚であるような印象を持ちがちですが、熊さんは肩に「ひょっとこ」の刺青を入れていたり、普段、かっこつけの熊さんが頭を丸めているという下りが、現代のファッションタトゥーを入れて、髪型を気にする若者像と重なります。昔の人は質素で謙虚であるというのは現代人の勝手なイメージで、落語の中には僕らと変わらない感性を持ったお調子者が、多数出てきます。この大山詣りという噺も時代設定を変えて現代版にしても、十分面白いと思います。

古典落語を現代版に置き換える噺家さんでは、立川談笑さんが大好きです。特に師匠の立川談志の十八番である、「芝浜」を現代噺に変えた「シャブ浜」は最高です。

立川談笑『シャブ浜』
未分類
スポンサーリンク
junをフォローする
swell is go on forever
タイトルとURLをコピーしました